2024年度 ガイダンス
10月2日(水)6限(18:45〜) 工学部合同ガイダンス:オンライン(UTASを参照)
51378 「分子の世界に飛び込もう:化学と生命の最前線に触れる」
科類・学籍番号・ 氏名・メールアドレス・受講希望ゼミ(最大で第6希望まで)を入力してください。 問合せ先工学部化学生命工学科 伊藤喜光 |
実施テーマ紹介
医療に使えるゲルを創ってみよう(工学部3号館・酒井研究室)
バイオデザインの手法で、医療で使えるハイドロゲルの開発を体験します。バイオデザインは、革新的医療機器開発に必要な思考・スキルを、医療現場のニーズを出発点として、デザイン思考に基づき実践的に習得する医療機器のデザインの方法です。本講座では、東京大学病院の臨床医と議論しつつ、臨床現場で求められるハイドロゲルの要求特性について議論し、実際にゲルを試作することで、バイオマテリアルの設計について学びます。

触媒の力で廃プラスチックを資源に(工学部3号館・野崎研究室)
化学産業は化石資源を有用物質に変換することを中心に発展してきた。化石資源から得られる有用物質のうちプラスチックは、安価・軽量で丈夫な材料としてわたしたちの生活になくてはならない存在である。一方で、化石資源から合成したプラスチック材料を燃焼処理するという一方通行の使い捨てをやめて資源循環を構築することは、持続可能な社会確立のために必須である。このゼミでは、高強度の繊維強化プラスチックを分解する触媒を調製し、分解反応に使用することで、原料を回収する過程を経験し、触媒開発の面白さを感じてもらう。

mRNAワクチンのしくみを学ぶ:RNAを細胞に入れてタンパク質を作らせよう
(工学部3号館・鈴木研究室)
mRNAを細胞に導入し、タンパク質を作らせることで、mRNAワクチンのしくみを学びます。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は世界的なパンデミックを引き起こしましたが、mRNAワクチンが迅速に実用化されたおかげで、人類は危機を乗り越えることができました。昨年のノーベル医学生理学賞がmRNAワクチンの開発に授与されたことは皆さんの記憶の新しいところでしょう。本ゼミナールでは、mRNAを試験管内で合成、脂質ナノ粒子と複合体を形成、細胞に導入して、タンパク質の発現を蛍光顕微鏡で観察する一連の流れを体験することで、 RNAの基本操作の体験に加え、タンパク質合成のしくみやワクチンの作用機序について学ぶことを目的とします。

人工核酸を化学合成する(工学部5号館・岡本研究室)
非天然の機能を持つ人工核酸 (人工DNA, 人工RNAなど)は、難治性疾患の治療やウイルスの高感度な検出を可能とする強力な分子素材として注目されています。しかし、人工核酸は生物に存在しない分子であることから、その開発には有機化学に基づいた分子設計と合成戦略が欠かせません。このゼミでは、(1) 人工核酸の化学合成、(2) 高速液体クロマトグフィー (HPLC) と質量分析計を用いた人工核酸の精製と同定、(3) 人工核酸を用いた標的核酸配列の高感度検出、に関わる一連の実験を通し、人工核酸の合成法やその応用に向けた分子設計のポイントを学び、核酸合成化学が医療・創薬分野の未来に果たす貢献について考察を深めることを目指します。

細胞機能を操作する分子を設計・合成する〜創薬プロセスの体験〜
(工学部3号館・山東研究室)
細胞機能を操作する分子を設計・合成・評価する実習を行い、創薬プロセスについて学習します。
薬は私たちの健康的な生活を支える重要な発明です。新しい薬を生み出すためには、分子生物学研究を通じた生命現象の理解、情報科学・有機化学を活用した新しい分子の創出、といった総合的な科学研究が必要です。本ゼミナールでは、薬の候補となる化合物をいかに設計・合成し、評価するのかを体験します。具体的には、創薬モダリティとして注目を集めるペプチド性薬剤の設計・探索手法の学習、および、合成した薬剤候補分子を組み替えタンパク質や培養細胞を用いて評価する方法についての実習を行い、創薬研究プロセスを体験します。

CRISPR-Cas9がゲノムDNAを切断するしくみを理解する(駒場IIキャンパス・先端研4号館・西増研究室)
Cas9タンパク質を精製しDNA切断実験を行い、CRISPR-Cas9によるDNA切断のしくみを学びます。
原核生物のCRISPR-Cas9獲得免疫システムはゲノム編集技術に応用され、生命科学分野に革命を起こしました。Cas9タンパク質はガイドRNAと協働し、特定のDNA配列を切断する機能をもちます。このユニークな性質を利用することにより、狙った遺伝子の改変が可能となりました。2020年のノーベル化学賞がCRISPR-Cas9の基礎研究に対して授与されたことは記憶に新しいことでしょう。本ゼミナールでは、Cas9タンパク質の精製、ガイドRNAの試験管内合成、Cas9-ガイドRNA複合体を用いたDNA切断実験、さらに、Cas9-ガイドRNA-標的DNA複合体の分子モデリングを通じ、CRISPR-Cas9の構造機能解析の基礎を学ぶことを目的とします。

高機能性フッ素系高分子を作り・測る(工学部9号館・フッ素有機化学研究室)
高機能高分子として知られる含フッ素高分子を合成・評価する実習を行い、その機能について学習します。
フッ素は高校までの有機化学ではほとんど登場しない元素ですが、医薬品や高分子材料として身の回りで役立っています。特に高分子中に多数のフッ素原子を持ったフッ素系高分子は、類まれなる化学・熱的安定性、撥水撥油性を有していることから、各種コーティング剤などに幅広く利用されています。本ゼミナールでは実際にフッ素系高分子を合成・評価することで、その特徴を理解することを目的とします。具体的には高分子およびフッ素系高分子について学習した後に、実際にフッ素系高分子合成を行いそのキャラクタリゼーションを行います。その後、フッ素系高分子の機能として撥水撥油性を評価することで実際の研究プロセスを体験します。高分子のキャラクタリゼーション・機能評価においては研究室の最先端機器を利用することで、世界トップレベルの研究環境を体験することが出来ます。

脳の中のシナプスを見る(工学部5号館・津本研究室・神経細胞生物学研究室)
生体内に存在する多種多様な抗体は目的のタンパク質に特異的に結合し、タンパク質工学により改変された抗体は様々な疾患の治療薬に用いられる。しかし、脳組織への抗体の透過性は極めて低く、中枢神経系の疾患においては未だ満足な治療効果が得られていない。本ゼミナールでは、私たちが新たに開発した従来の抗体よりも分子径の小さなVHH抗体を用い、神経伝達、記憶形成の場であるシナプスに存在するタンパク質を蛍光標識し、顕微鏡観察によるVHH抗体の組織透過性を評価する。

人工タンパク質を創る・作る(駒場IIキャンパス・生産技術研究所・坪山研究室)
計算機 (コンピューター)を活用することにより、タンパク質を人工的に設計することを目指します。
ChatGPTをはじめとするAI (深層学習モデル) が私達の生活を一変させつつあります。タンパク質科学も例外ではなく、AIを効果的に活用することにより、医学や工学で有用なタンパク質を効率よく設計することが可能になりつつあります。本ゼミナールでは、AIを活用してタンパク質を設計し、そのタンパク質の構造を別のAIで検証するという、人工タンパク質の最先端を体験することで、 タンパク質が機能する仕組みだけでなく、機械学習・深層学習について学ぶことを目的とします。
