教養学部 総合科目D(S) 生体医工学基礎 I
化学生命工学基礎

2026年度 S 金曜2限 開講 531教室


※4/10はオンライン実施、4/17以降は対面実施を予定しています。



問い合わせ先:坪山 幸太郎 

各講義の概要紹介

4/10 水を材料として使う:ゲルの物理化学の深化と医療材料への展開【酒井 崇匡】(オンライン)

ホームページ:https://gel.tokyo/tetra-gel/

ゲルは、ゼリーや豆腐、ソフトコンタクトレンズなど身近な物質・材料である。ゲルは、その大部分が水からなり、70%の水を含む私たちの体と類似の組成・構造を持っている。よって、ゲルを理解することは、生命の物質としての側面を理解することにほかならない。また、ゲルの理解に基づき精密に構造を制御することで、体に優しいバイオマテリアルを作ることもできる。本講義では、ゲルの最新の物理化学について議論するとともに、バイオマテリアルへの応用例について紹介したい。

キーワード:ソフトマター/ゲル/バイオマテリアル

4/17 二酸化炭素、廃プラスチック…使えない原料を使うための化学【野崎 京子】

ホームページ:https://park.itc.u-tokyo.ac.jp/nozakilab/

カーボンニュートラル社会の実現は、現代の最重要課題の一つである。二酸化炭素は1分子に炭素原子1個を含んでいる。廃プラスチックの大部分は炭化水素であり、石油や天然ガスとほぼ同じ組成だ。これらの厄介者を炭素資源として活用するために、私たち化学者は何ができるだろう。みなさんと一緒に考えたい。

キーワード:CO2排出削減/廃プラスチックの有効利用/グリーンイノベーション

4/24 海水から真水!:世界の水問題解決に貢献する高分子分離膜【辺見 昌弘】

東レ科学振興会

世界の水不足・水質汚濁は益々深刻になっています。水中の濁り成分からイオンまで取り除く高分子分離膜は、既に世界中の多くの人々を救っています。特に、逆浸透膜(RO膜)は、海水から塩分を除いて真水にしたり、下水や産業廃水を再利用できる水質に浄化したり、幅広く使われる高度な材料であり、たゆまぬ基礎研究と応用研究の賜物です。本講義では、高分子分離膜の基礎、最先端技術に加え、企業の研究・技術開発の考え方まで紹介します。

キーワード:逆浸透膜/海水淡水化/界面重縮合

5/1  化学と生物学を橋渡しする分子のデザイン、そこから生まれる健康社会【岡本 晃充】

ホームページ:https://park.itc.u-tokyo.ac.jp/okamoto/

生命活動を理解するためにそこに関わる分子の働きを理解することが必要です。その分子を制御したり、目に見えるようにしたりするには、それらを手助けする分子を新たにデザインして合理的に創り出す力を身に付けなければいけません。本講義では、化学合成DNAなどを例に出して、その有機化学からゲノム、免疫、創薬に至る一連の流れを概説します。光化学反応の話、体質・個性の話、新型コロナの話が分子設計をキーワードにして全部つながっていることを理解してもらえると思います。

キーワード:生物有機化学/生命反応化学/分子設計/バイオイメージング/核酸医薬

5/8 生命の源「アミノ酸」〜生理機能からモノづくりまで〜【涌井 渉】

味の素株式会社

1806年フランスで、アスパラガスの芽からアミノ酸がはじめて発見され、1935年までにたんぱく質を構成するすべてのアミノ酸が発見されました。私たちの身体の約2割を占めており生命体にとって欠かすことのできないアミノ酸に注目し、生理機能や栄養機能、呈味機能について整理します。また、材料としてのアミノ酸に着目したモノづくりについて化学と生命の融合領域を中心に紹介します。

キーワード:アミノ酸/生理機能/医薬品/化粧品/企業研究

5/15 「新奇」人工タンパク質: 自然界にないタンパク質を設計する【坪山 幸太郎】

ホームページ:https://sites.google.com/view/tsubo-lab/home

タンパク質は20種類のアミノ酸からなる多量体であり、その多様性ゆえに多彩な機能をもたせることができます。一方で、その多様性のために、タンパク質に関する基本法則をきちんと理解することなく、合理的に人工タンパク質 ("新奇"タンパク質; De novo protein) を設計することは困難です。そこで、大規模解析法と深層学習をはじめとする機械学習とを組み合わせることで、タンパク質の基本法則の解析と人工タンパク質の設計を繰り返します。タンパク質に関する基本的な内容とともに、実験とAIなどの計算技術の融合により生み出される革新的な新奇タンパク質の実例についても紹介します。

キーワード:タンパク質/分子設計/深層学習(AI)

5/29 含フッ素材料:特異な相互作用で生み出される機能【川口 大輔】

ホームページ:https://park.itc.u-tokyo.ac.jp/kawaguchi/

フッ素は最も電気陰性度の高い元素であり、含フッ素高分子材料は蛍石(CaF2)を原料として作られる人工物である。炭化水素系高分子材料中に含まれる水素をフッ素に置換すると、類まれなる化学・熱的安定性、低屈折率・低誘電率、撥水・撥油性をはじめとする様々な機能を発現し、エネルギー、エレクトロニクス、メディカル分野など幅広い分野の発展を支えている。換言すると、人類はフッ素を活用することにより豊かさを享受してきたと言える。本講義では、含フッ素材料における機能発現の基本原理について議論するとともに、最新の応用事例を紹介する。

キーワード:フッ素/材料/表面・界面

6/5 RNAと生命現象:病気の原因を分子レベルで理解する【鈴木 勉】

ホームページ:http://rna.chem.t.u-tokyo.ac.jp/

ヒトを含めあらゆる生命において重要な働きを担うRNAは、情報と機能の二面性をもつ唯一の生体高分子である。最近の研究で、RNAが転写後に受ける様々な修飾が生命現象と密接に関わることが明らかになりつつあり、エピトランスクリプトミクスと呼ばれる生命科学における新しい分野が生まれている。私たちはRNA修飾が欠損するとヒトの病気の原因となることを、世界に先駆けて突き止めた。本講義では病気の原因を分子レベルで理解することが如何に治療法の開発に重要かについてお話ししたい。

キーワード:RNA修飾/エピトランスクリプトーム/疾患

6/12 ニューロンの機能を分子の言葉で読み解く【平林 祐介】

ホームページ:https://park.itc.u-tokyo.ac.jp/Hirabayashi/WordPress/jp/

脳は数百億個のニューロンによる複雑なネットワークにより成り立っている。我々の記憶や思考はそれぞれのニューロンが計算ユニットとして情報を処理し他のニューロンへとシグナルを伝える過程の蓄積に他ならない。それぞれのニューロン内での情報処理メカニズムはブラックボックスであったが、近年の技術の発達によりナノスケールの分子的メカニズムがいよいよ明らかになり始めている。本講義では我々の思考の根幹を担う分子反応やナノレベルの構造について最新の研究結果を交え紹介したい。

キーワード:ニューロン/細胞生物学/ナノスケール

6/19 クライオ電子顕微鏡で新型コロナウイルスを視る【西増 弘志】

ホームページ:https://www.rcast.u-tokyo.ac.jp/ja/research/frontrunner_nishimasu.html

近年のクライオ電子顕微鏡解析技術の進展により、様々なタンパク質の立体構造を視て、それらが機能するメカニズムを理解することが可能になってきた。新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の構造研究から、ウイルスがヒトに感染するメカニズム、特定の変異がウイルスの感染性や毒性を変化させるメカニズムが原子レベルで明らかにされてきた。スパイクタンパク質の構造情報はmRNAワクチンの開発においてもカギとなった。本講義では新型コロナウイルスに関する構造生物学研究の成果について紹介したい。

キーワード:構造生命科学/クライオ電子顕微鏡/新型コロナウイルス/mRNAワクチン

6/26 工学から創薬に挑む:物理化学と計算科学による蛋白質相互作用の制御【津本 浩平】

ホームページ:https://park.itc.u-tokyo.ac.jp/phys-biochem/

難治性とされる疾病が、今までとは異なる戦略により創製された新薬によって克服される例が増えており、創薬研究における工学の力が重要視される時代を迎えようとしている。これは、創薬標的である蛋白質をいかに抗体や低分子で認識し、制御するかについての本質が、工学系のさまざまな手法(特に物理化学、計算科学)を駆使することで明らかにされてきたことによる。本講義では、生命化学/工学を基盤とした創薬の現状と今後について、最新の結果も交えて紹介したい。

キーワード:創薬/蛋白質間相互作用/物理化学/計算科学

7/3  光によって制御する機能性有機材料【正井 宏】

ホームページ:https://sites.google.com/g.ecc.u-tokyo.ac.jp/organic-functional-design-lab

光を利用して物質や材料の性質を制御する技術は、現代の科学技術において欠かせない存在となっています。特定の場所に、特定のタイミングで作用させることができる光技術は、電子デバイスの加工やバイオマテリアルの操作など、幅広い分野で活用されています。その鍵となるのは、光によって引き起こされる化学反応であり、有機化合物の分子設計がその性能を大きく左右することが知られています。本講義では、光に応答する有機材料の基本原理から、最新の応用事例までを紹介します。

キーワード:光機能/光反応/高分子材料

7/10 ケミカルバイオロジー:生命を化学で理解し、制御する【山東 信介】

ホームページ:https://park.itc.u-tokyo.ac.jp/sandolab/

私たちの体は分子の集まりである。生体分子の秩序だった活動が、生物が生命を維持する未解明の仕組みであり、その異常は様々な病気の原因となる。生体分子の機能の本質を知ることができれば、病気のメカニズム解明や早期診断も可能になる。また分子レベルで生体分子の機能を制御できれば、新たな生命工学技術になる。本講義では、これら生命の理解や疾病診断・治療に貢献する化学=ケミカルバイオロジーについて、代表例とともにその考え方を紹介したい。

キーワード:ケミカルバイオロジー/生命分子工学/生命と有機化学